「使えない作業者」は本当に作業者のせいなのか?——現場リーダーの成長を阻む思考停止

マサル

半導体工場で派遣から正社員となり最年少で課内最優秀社員に選出。早期退職後、農業スタートアップや期間工を経験。現在は自動車部品メーカーで働きながら、副業(ブログ運営、YouTube編集、バーテンダー)や資産形成(iDeCo、NISA、不動産投資)を実践中。多彩な経験を活かし、働き方や生き方を模索し続ける。

「使えない作業者」に悩む現場リーダーへ——それ、本当に作業者のせいか?

今日の申し送り

「使えない作業者が多すぎる」と嘆くリーダーよ、それ、お前の指導力不足が原因じゃないか? 人を活かせるかどうかは、現場リーダー次第だ。


どこかの現場で今日も飛び交う「使えない奴」呼ばわり

「なんでアイツはこんな簡単なこともできねぇんだ?」 「言われたことだけやれよ、余計なことするな!」 「ミスばっかりしやがって、もう使えねぇ!」

——どこの現場でも、こんな言葉が飛び交っているのを耳にする。作業者のミスや手際の悪さにイライラする気持ちはわかる。現場は忙しいし、納期に追われるプレッシャーもある。効率を上げるには、手間を減らし、スムーズに仕事を進める必要がある。

だがな、ちょっと待て。「使えない」と決めつける前に考えたことはあるか?
そもそも、そいつが「使えない」のか? それとも「使い方がわからない」だけなのか?
もし、お前が「作業者がダメだから現場が回らない」と思っているなら、それは 現場リーダーとして成長できていない証拠 かもしれないぞ。


使えない作業者」の正体とは?

「使えない作業者」とは、何を基準に判断している?

  • ・仕事が遅い
  • ・ミスが多い
  • ・指示を理解しない
  • ・自主的に動かない

確かに、そういう人がいると現場の生産性が落ちる。でも、その原因を作業者の能力不足だけに求めるのは 思考停止 だ。問題は、「なぜその作業者は使えないのか?」という視点が抜けていることにある。

現場の仕事は、単純作業のように見えて実は ノウハウの塊 だ。ちょっとしたコツや経験値が積み重なって、スムーズに作業ができるようになる。でも、新人や不慣れな作業者は そのコツを知らない だけ。そこを放置したまま「使えない」と決めつけるのは、ただの怠慢だ。


「人材の活かし方」を知っているリーダーとの差

この問題、実は 心理学や組織マネジメントの分野でもよく指摘される課題 なんだ。

① ピグマリオン効果(期待が成果を生む)

教育心理学では、「ピグマリオン効果」という理論がある。これは、 指導者が「この人はできる」と期待をかけると、実際にその人のパフォーマンスが向上する というものだ。逆に、「こいつはダメだ」とレッテルを貼れば、その人は成長しにくくなる。

つまり、「使えない奴」と思い込んで接すれば、ますます使えない状態が固定される。 現場リーダーの思考が、作業者の能力を決めてしまう んだ。

② ガラパゴス現場の「暗黙知」の罠

日本の製造業には、職人技や経験則に基づく「暗黙知」が多い。つまり、 教えられずに「察しろ」と求められる環境 だ。
でも、新人や転職者にとっては、その「察する」ことが不可能なことが多い。これは「コンピテンシートラップ」と呼ばれる現象で、 ベテランほど自分の知識を「当たり前」と思い、新人が何に困っているのかわからなくなる

こうした知識ギャップを放置したまま、「アイツは使えない」と言うのは、公平な評価とは言えない。

③ 「使えない」のではなく「使い方を知らない」だけ

現場リーダーの役割は、 「適材適所」を見極めること だ。
たとえば、ある作業者が細かい作業に向いていないなら、大雑把でも力仕事が必要な工程に回す。あるいは、ミスが多い人には、 なぜミスが起こるのかを分析して対策する
リーダーが「どの作業者をどう活かすか」を考えなければ、 どれだけ優秀な人材が集まっても、うまく機能しない


まとめ:現場リーダーの成長が止まる瞬間

もし、お前が「使えない作業者が多い」と口癖のように言っているなら、それは 自分のリーダーシップ不足を認めたくないだけ かもしれない。
使えないのではなく、 使い方を知らないだけ。それを理解しない限り、お前の現場はいつまで経っても成長しない。

次回の中編では、 「使えない作業者」をどう活かせばいいのか を掘り下げていく。今のままの思考では、現場の生産性は上がらないぞ。

【中編】「使えない作業者」を活かすために、現場リーダーが変えるべき思考と行動

「作業者のせい」にする現場の根本問題とは?

「使えない作業者が多すぎる」という声は、どこの現場でも聞く話だ。
だが、それを単なる「個々の能力不足」と片付けるのは安直すぎる。
この考え方がはびこる背景には、 現場リーダーのマネジメント不足教育の仕組みの欠陥 がある。

ここで、一度考えてみてほしい。

「お前が初めてこの仕事をしたとき、最初から完璧にできたか?」

経験を積んで慣れたからこそ、「こんなことは誰でもできる」と思い込んでしまっているが、最初は誰だって戸惑うものだ。それを放置したまま「使えない」とレッテルを貼るのは、 新人を潰す一番の方法 だ。

① 日本の現場に根付く「察して覚えろ」文化の弊害

製造業の現場は、 経験がモノを言う世界 だ。
「体で覚えろ」「仕事は見て盗め」といった精神論が根強く、 体系的な教育がされていない ことが多い。
これが「暗黙知」の罠だ。

例えば、ベテラン作業者が長年の勘でやっている作業手順は、新人には理解不能なことがある。
マニュアルが整備されていないと、新人は何をどうすればいいかわからず、結果としてミスを連発する。
そのたびに「こいつは使えない」と言われ、 本人のモチベーションも下がる

② 「作業者が悪い」と決めつけるリーダーは、自分の成長を止めている

「使えない作業者」が多い現場は、 「使えないリーダー」も多い現場 だ。

なぜなら、 作業者をどう育てるかを考えないリーダーほど、現場の成長を止める存在はいない からだ。
リーダーの役割は、 人材を活かすこと であって、「仕事ができる奴を見つけること」ではない。

  • 「俺の時代はこうだった」
  • 「できない奴が悪い」
  • 「教えてもどうせ覚えない」

こんな言い訳ばかりしているリーダーは、 自分自身が現場の足を引っ張っている ことに気づいていない。

③ 海外と日本の労働文化の違い

海外の工場では、「教育」に時間をかけるのが当たり前だ。
アメリカやドイツの製造業では、 新人教育のマニュアルがしっかり整備され、最初の数ヶ月は徹底的に研修を受ける

一方、日本ではどうか?


「とりあえず現場に放り込んで、あとは周りを見て覚えろ」


このスタイルが主流だ。

だが、この方法は 新人が成長するまでに膨大な時間がかかる だけでなく、教育の質にバラつきが出る という問題がある。

結果、「できる人はできる、できない人はずっとできない」
「使えない作業者」という構造が生まれる

これは作業者のせいではなく、 教育の仕組みが原因 だ。
つまり、 現場リーダーが意識を変えなければ、同じ問題が延々と繰り返される ということだ。


「使えない」と思う前に、リーダーが考えるべきこと

現場リーダーが「使えない」と判断する前に、本当にその作業者が「使えない」状態にあるのか分析する必要がある。

① 「何ができないのか?」を細かく分解せよ

「使えない」とひとくくりにする前に、まずは 具体的に何ができていないのかを整理 しよう。

例えば:

  • 「仕事が遅い」→ なぜ遅いのか? 作業手順を理解していない? それとも身体的な問題か?
  • 「ミスが多い」→ どんなミスが多いのか? 記憶力の問題? 注意不足? 手順が複雑すぎる?
  • 「指示を理解しない」→ 指示の出し方が悪い可能性は? 言葉足らずになっていないか?

こうやって 問題を細分化しないと、根本的な解決策は見えてこない

② 作業者の「得意・不得意」を見極める

人には向き不向きがある。
力仕事が得意な人もいれば、細かい作業が得意な人もいる。
それなのに、「どんな作業者も同じように動け」と求めるのは 無理がある

現場リーダーの仕事は、 作業者一人ひとりの特徴を見極め、適切な仕事を割り振ること だ。
「使えない」人材を「使える」ようにするには、その人の適性を知ることが第一歩となる。

③ 「覚えられない」のではなく「覚えさせ方が悪い」場合もある

指示を出しても作業者がなかなか覚えられない場合、
それは 作業者の問題ではなく、教え方の問題 かもしれない。

  • 言葉だけで伝えていないか?(視覚的なマニュアルがあれば、理解しやすい)
  • 一度に詰め込みすぎていないか?(短期間で多くのことを覚えさせるのは非効率)
  • 反復練習の機会を作っているか?(一度やって終わりではなく、何度もやらせる)

このあたりを意識するだけでも、 「使えない作業者」を「使える作業者」に変えられる可能性は高まる


まとめ:リーダーが変われば、作業者も変わる

ここまで話してきたように、
「使えない作業者」が多いのは、 現場リーダーの教育・指導方法に問題がある場合がほとんど だ。

作業者を活かせないのは、リーダーの責任
「察して覚えろ」ではなく、「覚えさせる仕組み」を作れ
「使えない作業者」ではなく、「適材適所を考えないリーダー」が現場をダメにする

次回の後編では、 具体的な解決策として、「作業者を育てるリーダーになる方法」 を紹介する。
ただ文句を言うだけのリーダーから、 現場を成長させるリーダー になれるかどうか、今が分かれ道だ。

【後編】「使えない作業者」を「使える作業者」に変えるリーダーの戦略

「使えない作業者」ではなく「使い方を知らない作業者」と考えろ

前編・中編で、「使えない作業者」と決めつけることが、現場の成長を阻害することを話してきた。
では、実際に どうすれば「使えない作業者」を「使える作業者」に変えられるのか

ここからは、 現場リーダーが実践すべき指導方法 を具体的に解説していく。

① 「見て覚えろ」はもう古い! 教育の仕組みを変える

現場ではよく「見て覚えろ」「経験で学べ」と言われるが、これは 教育ではなく放置 だ。
新人が何をどうすればいいかもわからないまま作業させれば、 ミスを連発し、やる気を失う のは当たり前だ。

では、どうすればいいのか?
「見る」→「説明を受ける」→「実践する」→「復習する」の4ステップを作る
マニュアルを整備し、「誰が教えても同じレベルの指導ができる」ようにする
一度にすべて覚えさせようとせず、「段階的に覚えさせる」ことを意識する

たとえば、ある工程を教えるときに、いきなり「これやっといて」と丸投げするのではなく、

  1. まず 作業を見せる(視覚で理解)
  2. その後 言葉で説明する(理屈を理解)
  3. 次に 作業者自身にやらせる(実践)
  4. 最後に 復習の時間を設ける(定着)

この流れを意識するだけで、 「覚えられない作業者」を激減させられる


② ミスを「作業者の責任」にしない

現場では、「ミスをしたやつが悪い」と考えがちだ。
だが、優れたリーダーは 「ミスは仕組みの問題」と考える

作業工程に問題はないか?(やり方が複雑すぎる、分かりにくい)
作業者の理解度に合わせた指導ができているか?
ミスが起こりやすい環境になっていないか?(忙しすぎて確認不足になる、疲労が溜まりやすい)

たとえば、毎回同じようなミスをする作業者がいる場合、
そのミスが 「その人の問題なのか」、それとも「工程そのものに問題があるのか」 を考えるべきだ。

「同じミスが繰り返される=作業者が悪い」ではなく
「同じミスが繰り返される=現場の仕組みに問題がある」と考える習慣をつけよう。


③ 「やる気がない作業者」には、やる気を引き出す工夫をする

「どうせ言ってもダメ」「こいつはやる気がない」と思い込んでいないか?
やる気がないのではなく、「やる気を引き出せていない」可能性を考えるべきだ

小さな成功体験を積ませる
いきなり「全部できるようになれ」ではなく、 少しずつ達成感を与える
たとえば、「この作業だけは完璧にできるようになった」という 小さな成功体験 を積ませることで、
「やればできる」という自信が生まれ、次のステップへ進みやすくなる。

「ここが良かった」と具体的に褒める
「よくやった!」ではなく、「○○の作業スピードが上がったな」「ここ、前より正確にできるようになったな」と、具体的にフィードバックすると効果が高い。

適材適所を見極める
全員が同じ作業に向いているわけではない。
「遅いけど正確な人」「スピードはあるがミスしやすい人」など、特徴を見極めて 適材適所に配置する ことで、作業者のストレスも減り、能力を発揮しやすくなる。


リーダーが変わると現場はこう変わる

ケース1:「使えない」と言われた新人が戦力になった話

ある工場で、新人Aは「使えない」と言われていた。
理由は「仕事が遅い」「指示を理解できない」からだ。

だが、リーダーがAに 細かい手順を1つずつ教え、段階的に作業を任せる方法 を取ったところ、
1ヶ月後には 作業スピードが改善 し、3ヶ月後には 他の作業者と同等のスピードで仕事ができるようになった

Aが「使えない作業者」だったのではなく、教育の仕方に問題があった だけだったのだ。


ケース2:「ミスばかりの作業者」が正確な仕事をするようになった話

別の現場では、Bという作業者が 同じミスを何度も繰り返していた
以前のリーダーは「アイツは注意力がない」と決めつけていたが、新しいリーダーは ミスの原因を分析 した。

すると、 作業手順がわかりにくいことが原因 だと判明した。
そのため、作業指示を 「言葉」だけでなく「図解マニュアル」でも伝えるように改善 したところ、
Bのミスは 大幅に減少 し、結果として現場全体の不良品率も改善した。

このケースでは、 ミスを作業者のせいにするのではなく、現場の仕組みを変えたことが成功の要因 だった。


結論「使える作業者」を増やすのは、リーダーの仕事だ

最後に、もう一度言う。
「使えない作業者が多い」と嘆く前に、お前自身の指導力を見直せ

「使えない」のではなく「使い方を知らない」だけ
「察して覚えろ」ではなく「具体的に教えろ」
「ミスする奴が悪い」ではなく「ミスが出る仕組みに問題がある」と考えろ
「やる気がない」のではなく「やる気を引き出す方法を考えろ」

これができれば、現場の作業者は確実に成長する
そして、その成長を引き出せるリーダーこそが、本当に優れたリーダーだ

もう「使えない作業者が多すぎる」なんて言い訳はできないぞ?


現場を変えるのは、お前の指導次第だ。今すぐ行動を変えろ!

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マサル

半導体工場で派遣から正社員となり最年少で課内最優秀社員に選出。早期退職後、農業スタートアップや期間工を経験。現在は自動車部品メーカーで働きながら、副業(ブログ運営、YouTube編集、バーテンダー)や資産形成(iDeCo、NISA、不動産投資)を実践中。多彩な経験を活かし、働き方や生き方を模索し続ける。