「また1人、辞めたらしい…」そんな声を聞くのは、これでもう何度目だろう。
なのに上は「もっと現場のマネジメントをしっかり」とか言ってくる。――もう聞き飽きたよな。
今日の申し送り:
守る制度をやめたのに、忠誠だけ求めるのはズルい。
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辞めたくて辞めさせてるわけじゃない
「辞めないでくれよ」って、心の中では毎回思ってる。
ようやく育ってきた若手が、ある日ふっと言う。
「ちょっと、次のこと考えたくて…」
「もっと自分を成長させたいんです」
「正直、今のままじゃ不安で…」
こっちは、「いやいや、やっと一人前になってきたのに…」って頭を抱える。
人が足りない。
段取りが回らない。
またゼロから教えるのか…と思うと、ため息しか出ない。
なのに、上の人たちはこう言う。

「若手とのコミュニケーションが足りないんじゃないの?」
「ちゃんと育成してるのか?」
「離職率が高いのはマネジメントの問題だよ」
いや、ちょっと待てって思うよな。
昔は「長くいてくれ」の代わりに、ちゃんと“見返り”があった
そもそも昔って、辞めないでいてもらうために、会社が守ってたんだよ。
- 年を取れば給料が上がった
- 勤続年数で信用された
- よほどのことがない限りクビにならなかった
つまり、「安心していられる場所」が用意されてた。
だからこそ、現場も「ここでがんばろう」って思えたんだ。
若手も「この会社で長くやっていこう」って思えた。
でも今はどうだ?
年功序列はなくなった。
終身雇用も、ほぼ崩壊。
「自分のキャリアは自分で切りひらけ」って言われる時代。
じゃあさ――
「辞めないで」って言う前に、会社は何を用意してくれてるんだ?
制度の“おいしいとこ取り”してないか?

最近よく聞くのが「ジョブ型雇用」ってやつ。
スキルや役割ベースで評価する、欧米型の働き方。
でも現場はこうだ。
- 配属はその時の都合次第
- やることは日によってバラバラ
- 評価基準はよく分からない
- でも成果は求められる
…これ、ただの“いいとこ取り”じゃないか?
年功序列はやめた。
でも仕事の中身も、評価の基準も、ちゃんと示さない。
→ 結局、現場がすべて背負うだけ。
これで「最近の若手は根性がない」なんて言ってたら、ただの責任転嫁だよな。
制度を変えたなら、関係性のルールも変えるべき
「辞めないで」と言いたいなら、
まず会社が“辞めない価値”をちゃんと用意しないといけない。
- この会社にいることで何が得られるのか
- がんばった人がどう報われるのか
- 役割と責任のラインがどう分かれているのか
これがないのに「定着率を上げろ」とか、「もっと主体性を育てろ」とか、
現場リーダーにばかり要求してくるのはズルい。
「辞められて困る」って言う前に、考えることがある

若手がすぐ辞める。
ベテランも辞めていく。
リーダー層が一番しんどい。
これはたしかに現場の課題。
でも、本当にそうだろうか?
「会社が先に“約束”をやめたのに、現場だけ“忠誠”を求められてる」
この構図に、そろそろ気づいたほうがいい。
次回【中編】ジョブ型って何?そして、なぜ“中途半端”が現場を苦しめるのか?では、
- そもそも「ジョブ型」って何?
- 日本の会社がなぜ“中途半端”な制度に走ったのか?
- そしてなぜ、現場だけが板挟みにされてるのか?
――この疑問を、やさしい言葉でほどいていきます。