一味違う部下の怒り方 〜西郷隆盛に学ぶ「叱る力」〜

マサル

半導体工場で派遣から正社員となり最年少で課内最優秀社員に選出。早期退職後、農業スタートアップや期間工を経験。現在は自動車部品メーカーで働きながら、副業(ブログ運営、YouTube編集、バーテンダー)や資産形成(iDeCo、NISA、不動産投資)を実践中。多彩な経験を活かし、働き方や生き方を模索し続ける。

「一味違う部下の怒り方——西郷隆盛に学ぶ、人を成長させる叱り方の極意」

今日の申し送り

部下を頭ごなしに叱るのはもう時代遅れ。西郷隆盛の「敬意と愛情」を込めた叱り方を実践すれば、部下の心に響き、成長を促すことができる。


「部下を叱るのって難しい…。」
工場現場のリーダーとして、こんな悩みを抱えていないか? 仕事のミスや怠慢を見過ごすわけにはいかないが、厳しく叱れば相手が萎縮してしまう。逆に甘くすれば「ぬるい上司」と舐められ、現場の士気が下がる。どうすれば、部下にしっかりと伝わる叱り方ができるのか?

そんな悩みにヒントをくれるのが、明治維新の立役者・西郷隆盛だ。彼の叱り方は、ただ怒るのではなく「相手を尊重し、成長を促す」ことを目的としていた。今回は、現場のリーダーが今すぐ実践できる「西郷流の叱る力」を徹底解説する。


作業者を叱るのってめっちゃ難しい。

工場現場での「叱り方」に悩むリーダーは少なくない。例えば、こんなシーンを想像してみてほしい。

場面1: 新人作業員がミスを連発し、品質不良が続出。リーダーは「何度同じことを言わせるんだ!」と声を荒げた結果、新人は委縮し、余計にミスが増えてしまった。


場面2: 若手が同じ過ちを繰り返しているのに、リーダーは「まあ、次から気をつければいいさ」と軽く流した。結果、部下は「別に怒られないし、まあいいか」と気が緩み、再発が止まらない。

どちらも、部下のためを思っての言動だが、効果は薄い。前者は「恐怖の支配」で部下の自主性を奪い、後者は「甘やかし」で責任感を損なう。では、どうすれば「厳しさ」と「優しさ」のバランスが取れた叱り方ができるのか?

その答えが、西郷隆盛の「敬天愛人(けいてんあいじん)」の精神にある。


人を叱る時も「敬天愛人」の精神。

西郷隆盛は「敬天愛人」、すなわち「天を敬い、人を愛する」という哲学を信条としていた。彼の部下に対する態度は、叱る時もこの精神が貫かれていた。

例えば、西郷は部下が失敗したとき、まずは「なぜこのミスが起きたのか?」を冷静に分析したうえで、相手に対する敬意を忘れずに指導したというエピソードが残っている。

元陸軍大将・大山巌(おおやまいわお)は、西郷についてこう語っている。

「叱責される際にも、西郷どんの言葉には愛があった。厳しさの中にも『お前を信じている』という温もりが伝わってきた。」

心理学的にも、「恐怖」ではなく「信頼」に基づく指導のほうが、部下の成長につながることが証明されている。スタンフォード大学の研究によれば、肯定的なフィードバックを伴う叱責は、従業員のモチベーションを25%向上させるというデータがある。

西郷隆盛流の叱り方とは、相手の尊厳を傷つけず、未来への希望を与える叱り方なのだ。


西郷隆盛に学ぶ「叱る力」——部下の成長を促す怒り方の本質

なぜ「叱る力」が現代の現場に必要か?

現代の工場現場では、リーダーの叱り方ひとつでチーム全体の士気や生産性が大きく変わる。少し昔の日本の職場では「黙ってついてこい」式の指導が当たり前だった。しかし、時代は変わり、現代の部下たちは「なぜ叱られるのか」「なぜこの仕事が重要なのか」を理解しなければ納得しない。単に怒鳴りつけるだけでは逆効果だ。

心理学者ダニエル・ゴールマンによれば、叱責が効果的であるためには、次の三つの条件が必要だという。

  1. 相手への敬意を持つ(尊重の姿勢)
  2. 具体的な改善点を示す(曖昧な叱責は効果なし)
  3. 叱責の目的を成長に置く(単なる怒りの発散ではNG)

これらは、まさに西郷隆盛の「敬天愛人」の精神に通じるものだ。西郷は、部下を叱る際に「この部下にどんな成長を促したいのか?」を常に意識していたという。


現場リーダーが陥る「叱り方の落とし穴」

では、現場のリーダーが部下を叱る際に陥りがちな「叱り方の落とし穴」とは何か?以下に、典型的な3つのパターンを挙げる。

1. 感情的に怒る(怒りの発散型)

  • ・ミスを目の当たりにし、ついカッとなって「何やってんだ!」と怒鳴る。
  • ・部下は恐怖心から従うが、なぜ叱られたのかが理解できず、同じミスを繰り返す。
  • ・結果、信頼関係が損なわれ、チーム全体がギスギスする。

現場エピソード:
あるリーダーが不良品の発生率増加に苛立ち、作業者を叱責。作業員は怖がって報告をためらうようになり、問題が深刻化した。

工場の現場ではめっちゃあるあるだよね。この過ちに気づいていない昭和生まれの管理職はめちゃめちゃ多い。

2. 叱ることを避ける(逃避型)

  • ・「人間関係が悪くなるのが嫌だ」と思い、部下のミスを見過ごす。
  • ・短期的には和やかな空気が保たれるが、ミスが常態化し、職場全体の規律が崩れる。

現場エピソード:
あるリーダーが「次は気をつけような」と済ませた結果、同じ工程で不良品が3ヶ月連続で発生。生産ライン全体に影響が及んだ。

3. 威圧的に怒る(パワハラ型)

  • ・「オレの言うことが正しい」と上から目線で怒鳴りつける。
  • ・部下は反発心を抱き、指示に従うふりをする「やらされ仕事」になる。

現場エピソード:
あるベテラン作業員が「こんなやり方じゃダメだ!」と若手を叱責。若手は指示通りには動くが、学ぶ姿勢を失い退職してしまった。

これも工場ではよく見かけるね。教育が下手な人の典型的なパターンだね。


西郷流「叱る力」の核心:愛情7割・厳しさ3割

西郷隆盛の叱り方は、まさに「愛情7割・厳しさ3割」だった。彼は叱る際に、必ず相手に尊敬と信頼を示しながら、的確な指摘を加えていた。例えば、彼が薩摩藩士を叱る際に使っていた「三つのステップ」は、現代の現場にも応用できる。

  1. まず相手を認める(自己効力感を守る)
    「お前が普段頑張っていることは知っている。だからこそ言うが…」
  2. 行動を具体的に指摘する
    「今回、作業マニュアルの確認を怠ったことでミスが発生した。この原因を考えてみよう」
  3. 未来への期待を伝える
    「お前なら必ず改善できる。次は確認の時間を取ってみよう」

これは、現代のリーダーにとっても有効なアプローチだ。西郷は「叱る」とは、相手を否定するのではなく「成長の機会を与える行為」だと理解していたのだ。

後編:一味違う部下の怒り方——西郷隆盛流「叱る力」の実践法

西郷流「叱る力」を現場に取り入れるためのステップ

ここまで西郷隆盛の「敬天愛人」の精神を基盤とする叱り方の本質を学んできたが、これを実際の現場で活かすためにはどうすればいいのか?以下に、すぐに実践できる「西郷流叱り方メソッド」を3ステップで提案する。

ステップ1:叱る目的を明確にする——「相手の成長」を軸に

叱る前に、「自分はなぜ叱るのか?」を自問すること。感情的な怒りの発散ではなく、部下の成長と現場の改善が目的であるべきだ。

実践例:
叱る前に、「この叱責で何を伝え、どう成長を促したいか?」を紙に書き出してみる。「改善ポイント」と「期待する行動」を箇条書きにするだけで、言葉に説得力が生まれる。


ステップ2:敬意を持って叱る——「お前だからこそ言うんだ」

西郷隆盛は、部下を叱る際にも相手を「信頼している」というメッセージを込めた。現場で部下を叱るときも、まずは相手の価値を認めてから指摘することが大切だ。

使えるフレーズ例:

  • 「普段、お前が頑張っているのはわかってる。だからこそ、今日は大事な話をする。」
  • 「お前の成長を期待しているからこそ、言わせてもらう。」

この一言で、部下は「叱られる」から「期待されている」に気持ちが切り替わる。


ステップ3:未来志向で締めくくる——「次に何をすべきか?」

叱る目的は過去のミスを責めることではない。未来に向けた改善行動を促すことがゴールだ。西郷隆盛も叱責の最後には「お前ならできる」と未来への希望を与えていた。

使えるフレーズ例:

  • 「次は作業開始前にチェックリストを使ってみよう。」
  • 「次回は君に任せるから、準備をしっかりして自信を持ってやってみてくれ。」

これにより、部下は「怒られた」と感じるのではなく、「期待されている」と感じて前向きな気持ちになれる。


実践イメージ

ケース1:品質改善チームの再生

ある工場で、不良品の発生率が高まり、品質改善チームの士気が低下していた。リーダーの田中さん(仮名)は「なぜミスがなくならないんだ!」と怒鳴る指導で、現場は委縮していた。

そこで彼は西郷流の叱り方を実践。

  1. ミーティングで「いつも努力してくれていることには感謝している」と前置き。
  2. 次に「しかし、今回は確認ミスで3件の不良品が出てしまった。どこに原因があったか一緒に考えよう」と具体的に指摘。
  3. 最後に「次回は二人体制でダブルチェックを導入してみよう」と改善策を示し、期待を伝えた。

結果、チームは「怒鳴られない安心感」と「具体的な改善指示」で主体的に取り組むようになり、不良品率が3ヶ月で40%減少した。


ケース2:新人教育での成功体験

新人指導担当のリーダーが、何度教えても同じミスをする若手に苛立っていた。「もう何度言えばわかるんだ?」と怒鳴りそうになる気持ちをぐっとこらえ、西郷流を応用。

まず、「誰でも最初はミスするもの。俺もそうだったよ」と共感を示し、「次は自分で確認リストを作ってみよう」と具体的な行動を提案した。さらに「お前ならできる」と声をかけた。

結果、新人は自信を取り戻し、翌月からは同じミスをしなくなった。


叱ることは「愛情の裏返し」

部下を叱るのは、決して気持ちのいいことではない。しかし、叱らなければ、部下は自分の課題に気づけず、成長の機会を失う。西郷隆盛が示したように、「叱る」とは「愛情をもって相手を高める行為」なのだ。

現場のリーダーたちよ、次に部下を叱るときには、次の三つを思い出してほしい。

  1. 叱る目的は部下の成長であること
  2. まず相手への敬意を示し、信頼を伝えること
  3. 叱るだけで終わらず、未来への希望を語ること

さあ、今日から実践だ。

次に部下がミスをしたときこそ、西郷隆盛の「敬天愛人」の心で叱ってみよう。

怒鳴ることなく、相手を尊重しながら未来を示す——それが、一味違う部下の怒り方だ。

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